分子料理学

 

料理とは食材を組み合わせて、熱したり冷やしたり、水や油に溶かしたり、蒸したり乾かしたりするものですね。

つまり化学反応の集まりです。

たとえば砂糖を加熱したら褐色になるのは

「メイラード反応」

という立派な化学反応です。

 

しかし一方で、これまで料理の世界はきわめて経験的・感覚的なものでした。

 

化学反応が説明されている

「サイエンティフィックな」

料理レシピは、ほとんど見たことがありません。

 

「愛情をこめて手作りしたら料理は美味しくなる」

こういう感覚的なセリフをよく耳にしますね。

本当にそうなの?

と疑いたくなる場合もなくはないとは思いますが、まあ、あまり深く追求せず、素直に聞くのが料理や食育の世界では「お約束」になっています。

 

 ▽ ▽ ▽

 

近年、「分子料理学」という単語を目にすることが多くなりました。

これは料理を化学反応としてとらえる考え方です。

 

分子料理学は、今から25年ほど前に2人の科学者が、

「料理のプロセスを科学的に分析することで、勘に頼った調理をやめさせ、料理の言い伝えで間違ったものがあれば払拭し、結果的に料理の美味しさを高める」

という目的で提唱したものでした。

分子料理学を学んでレシピを書けば、誰が作っても正確に同じものができるようになり、美味しさも正確に再現できる、というわけです。

また、無駄なことをしなくてよくなります。

 

さらに、分子料理学の発想を使い、これまでの料理にはなかった材料や化学反応を組み合わせ、新しい料理を開発する動きも活発になっています。

  • 醤油をふんわりしたムース状にし、 ムースのひときれを載せて寿司を食べる
  • オリーブオイルを粉末にし、サラダにふりかけのようにかけて食べる
  • 温度が高いほどよく固まるアイスクリーム

といった料理法がこれまでに開発されています

 

このように分子料理学で創造された料理は、

「アートとサイエンスの融合」

として賞賛されることが多くなりました。

「世界でもっとも予約の取れないレストラン」

として有名だったスペインの「エル・ブリ(エル・ブジともいいます)」のシェフであるフェラン・アドリア氏は、押しも押されぬこの分野の第一人者です。

(レストランじたいは現在はクローズしています)

 

分子料理学を学びたい人のための講座や本もあります。

  • ハーバード大学には「科学と料理」というテーマの講義がありました。
  • マイクロソフト社の元幹部だったネイサン・ミアボルド氏は、天才的なIT技術者でありながら分子料理学のシェフとしても有名で、「Modernist Cuisine」という分子料理学の本を出版しています。

 

ミアボルド氏のような人は 、フード・サイエンティストと呼ばれています。

 

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分子料理学のこうした流れは、これまで料理にあまり興味を示さなかった「理系的な人」を料理にひきつける役割を果たしているようです。

 

これまで、料理の世界にいたのは以下のポジショニングの人たちでした。

 

いっぽう、分子料理学に魅せられているのは、次のようなポジショニングの人たちだと思われます。

 

これはいわば、新しい市場が誕生したのとまったく同じです。

この新しいターゲットに対する食育ビジネスが、これからは期待されるでしょう。


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