名演奏の心理学

 

2007年の正月が明けて間もないころ。

寒い朝、通勤ラッシュの時間に、アメリカの首都ワシントンである実験が行われました。

どういう実験かというと…。

 

ある野球帽の男性が、地下鉄の駅でストリート・ミュージシャンに扮し、バイオリンを演奏する、という実験です。

バッハを中心とした有名な曲ばかりが演奏されました。

 

 ▽ ▽ ▽

 

演奏が始まって数分後。

通行人の女性が帽子に小銭を入れてくれました。

しかし演奏に耳は傾けず、早々に立ち去ってしまいます。

その数分後。

しばらく演奏に耳を傾けていた男性がいました。

しかしその人も、待っていた電車が到着したと同時にその場を去ってしまいます。

さらに数分後。

小さな男の子が母親に言われてお金を帽子に入れます。

男の子は興味深い様子で見ていましたが、母親にうながされ、母子ともにその場から立ち去ってしまいました。

 

その後も男性はひたすらバイオリンを奏で、何人かが立ち止まったりお金を入れてくれたりしました。

開始から45分後、その実験は終了となりました。

 

演奏を終えてみると

  • 男性の前を通り過ぎた約1000人のうち、足を止めて演奏を聞いたのは7人のみ。
  • ほぼ全員が数分しか立ち止まらず、ほどなく立ち去ってしまう。
  • 金銭を入れてくれたのは28人。
  • 集まった金額は50ドルほど。

という結果でした。

朝のラッシュ時に行われた演奏と考えれば、こんなものなのかもしれません。

 

しかし、もし人々がこの男性を、

  • 世界的なグラミー賞バイオリニスト、ジョシュア・ベル。
  • 前の夜にワシントンで開かれたコンサートでは全席完売となった人物。

だと知っていたら、はたしてどのような結果になったでしょうか?

(彼をジョシュア・ベルだと気付いた人が1人だけいたそうですが…)

 

目の前で名演奏が行われていたのに、多くの人がそれに気づかなかった…というわけです。

ちなみにこの実験は、ワシントン・ポスト紙のコラムニストが発案したそうです。

ジョシュア・ベル氏も、よくこの実験を OK したものですが。

 

 ▽ ▽ ▽

 

この実験から言えることは、

  • 良いもの(優れた商品やサービス)が良いものとして人々に認識されるためには、認識されやすい環境づくりや仕組みづくりが必要

だということではないでしょうか。

つまり、品物は良くてもパッケージが陳腐であれば、価値は伝わらない。

 

認識されやすい環境づくりや仕組みづくりを

「マーケティング」

と言い換えてもよいでしょう。

商品の価値やサービスの良さが相手に伝わるような状況を作るということでもあります。

 

また、逆に、同じくこの実験から、

  • 人は案外、商品やサービスの価値をちゃんと見ていない

ということも言えるのかもしれません。

 

なお、この実験の様子は、YouTube でも見ることができます。


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