「安心安全」では売れない理由

 

料理はけっこう美味しいのに、お手洗いに今ひとつ清潔感がない…。

そんな飲食店で残念な気分になった経験、ないでしょうか。

お手洗いに対する配慮に欠けた店は、料理の味が多少良くても客足が遠のくのが普通です。

 

(「小汚ないけどウマイ」という路線で営業している飲食店も確かにあります。線路のガード下にある立ち飲みの居酒屋とか焼肉店とか。ただしあくまで例外です)

 

しかし、かといって、お手洗いをどんなにピカピカにしても、客はそれだけでは増えません。

つまり、

  • 飲食店のお手洗いがキレイでも客は増えない
  • しかしお手洗いのキレイでない飲食店の客は減る

ということです。

 

このように、努力しても報われることはないが、手を抜くと痛い目にあう。

=出来ててあたりまえ。誰もほめてくれないが、できなければ叱られる。

という性格のものを、

「衛生要因」

と呼びます。

 

マーケティングの教科書などでは、

  • 飲食店のお手洗い

のほかに

  • イベント会場の駐車場(駐車場が充実しているだけでは来場者は増えないが、駐車場への配慮に欠けたイベントの来場者は減る)

などが例として挙げられています。

 

ファーストフード店やピザ店などで注文からデリバリーまでの時間短縮がよく課題となるのも、この「待ち時間」が衛生要因になるからです。

待ち時間が短くても客は増えませんが、待ち時間が長いと客は減ります。

待ち時間を短縮することで、客の不本意な減少を防ごうとしているわけです。

 

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衛生要因とは逆に、努力すればするほど報われる性質のものは

「動機づけ要因」

と呼ばれます。

  • 料理の腕が上がる。
  • 珍しい食材を使った料理が出る。
  • メニューの書き方が工夫されている。
  • 人気タレントを呼んでイベントの目玉にする。
  • 内装を改良して雰囲気を変える。

などが動機づけ要因に該当します。

 

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さきほどの衛生要因を改善することは

「マイナスを小さくする」

ことです。

したがって、衛生要因が「特長」や「売り」になることはありません。

「当店はお手洗いがキレイなのが一番の売りです」

「駐車場がちゃんとしているがこのイベントの最大の特長です」

といったアピールはあまり見ません。

特長にならないものをアピールしても顧客の心に響かないからです。

 

いっぽう、動機づけ要因を改善することは

「プラスを大きくする」

ことです。

したがって、動機づけ要因は「特長」「売り」になります。

「当店のチーズケーキはびっくりするほどの美味しさです。ぜひご賞味ください」

「なかなか手に入らない魚が入荷しました。食べに来てください」

といったアピールが成り立ちます。

 

 ▽ ▽ ▽

 

衛生要因と動機づけ要因を区別せずゴチャゴチャにしているために、せっかくの努力がなかなか報われない…

そんなケースも少なくありません。

例えば

「安心安全な農産物」

といったコンセプトでビジネスをしている場合に、衛生要因と動機付け要因がゴチャゴチャになっている場面をよく見かけます。

「トレーサビリティのしっかりした安全な野菜をお届けするのが当社の使命です」

といったうたい文句をチラシなどで目にすることがありませんか?

こうした会社は、「トレーサビリティ」「安全な野菜」というキーワードで顧客に訴えようとしているわけです。

 

でもこれは、マーケティング的には少々変です。

なぜなら安全な野菜を届けようとするのは食に関わる企業として当然のこと(少なくとも買う側の人たちはそう思っています)だからです。

当然のことを、さも素晴らしい特長であるかのように主張しても、買う側の人たちにはあまり響きません。

「当店はお手洗いがキレイなのが一番の売りです」

というのと同じことだからです。

 

 

 

「トレーサビリティのしっかりした安全な野菜」

は、衛生要因なのです。

食の安全を確保するのは確かに大切だけれども、それを特長にアピールしても顧客を呼び込むことにはなりません。

アピールしたければ、

「安心安全な農産物」

であること以外に、なにかプラスアルファの要素が必要になります。

 


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