
何をしたら「食育をした」ことになるでしょうか。
その答は、人によってさまざまだと思われます。
- 地元の食材で体によい食事を作り、提供する
- 収穫の手伝いをする
- 食品ラベルを見ながら買い物をする
などはいずれも、何らかの意味で「食育」ではないでしょうか。
しかし、食育基本法によれば、食育とは
「食事や食物に関する知識と選択力を身につけ、健全な食生活が送れるようにするための教育」
とされています。
つまり厳密な意味での食育は「教育」です。
したがって、食育は「講座」「教室」「セミナー」「授業」といった形で行われるのが、もっともシンプなものだと言えます。
<目次>
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1.食育講座とは
食育基本法の言葉を借りれば、
「健全な食生活が送れるようにするために、食事や食物に関する知識を教える講座」
これが食育講座の定義となります。
そのために教える内容は、おおよそ以下が考えられます。
- 栄養に関する知識
- 農業に関する知識
- 食の安心・安全に関する知識
- 食社会問題に関する知識
- 料理や食べかたに関する知識
- 食文化に関する知識
2.第1世代の食育講座
食育基本法が成立した2005年の前後から数年間、数多くの食育講座が各地で開催されました。
主催者は
- 政府や自治体
- 企業
- 協会などの団体
- ボランティア組織
など、様々でした。
食育総研では、この時期の食育講座を「第1世代の食育講座」と呼んでいます。
「第1世代の食育講座」の特徴は以下です。
- 前述した「食育講座で教える内容」をほぼ網羅した内容
- したがって、主催者がどこであれ、講座の中で教える内容は似たり寄ったりになっている(※)
- 対象を限定していない
- 「食育講座」という言葉を使っている
当時の食育講座は「網羅的で総花的だった」ということができるでしょう。
政府が食育基本法などを通じて食育講座で教えるべき内容を公表していたため、そこが忖度されたのかもしれません。
「第1世代の食育講座」はその後まもなく、開催される頻度が大幅に減りました。
有料の受講料を払って食育講座を受講することが、あまりなくなってきたのです。
その理由としては
- どの講座も名前や内容が似ていたため、マーケティングでいう「差別化」がなされていなかった
- 自治体やボランティア団体が安価ないし無料で食育講座を開催することが多く、そうした講座との競争にさらされた
といったことが考えられます。
3.第2世代の食育講座
近年、定評のある(人気のある)食育講座には、以下のような特徴があります。
- 「食育講座」という言葉を使わない(※※)
- 前述した「食育講座で教える内容」を網羅するのではなく、そのうち一部を深く掘り下げて教えている
- 対象を限定している(アスリート向け、美容に興味のある女性向け、シニア男性向けなど)
- 人々が関心を寄せていることを食育につなげようとする
「第1世代の食育講座」がマーケティングを考慮せずに展開されていたのに対し、これら「第2世代の食育講座」はマーケティングを意識したものとなっています。
そのほか、健康経営の現場に適した食育講座を開発しようという動きも、昨今は見られます。
3.まとめ
かつての食育講座(第1世代)は、総花的で差別化要素の少ないものでした。
背景には、政府が意図する食育の内容(食育基本法に準じたもの)に従おうという忖度意識があったものと思われます。
昨今の食育講座(第2世代)は、第1世代に比べてマーケティング的にも進化しています。
(※)第1世代では、ほぼすべての食育講座で「食事バランスガイド」が教材として使われていました。第2世代ではさほど使われなくなっています。
(※※)「食育講座」という言葉を使わない講座を「食育講座」とみなしてよいのかどうか、については意見の分かれるところですが、食育総研ではこうした特徴のある講座のことを「第2世代の食育講座」と呼ぶことにしています。
4.あわせて読む
- 検定試験を受けるのにメールアドレスの登録などは必要ありません。
- 合格者全員に進呈:「食育活動スタートアップガイド(PDF)」