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ダイエット x 食育

アメリカで人気の「食育ダイエット」について紹介します。

その本質は、「痩せる方法」の紹介ではなく、「健康によい食事法」の紹介です。

 

「ダイエット」というと、日本では「痩せる方法」というニュアンスになりますね。

食事制限をするだけでなく、体を動かしたり、痩せる目的のサプリメント(※)を飲むようなことも日本では「ダイエット」に含まれています。

しかし、もともと英語の diet は、「食事」「食事のしかた」「食事法」…つまり、「食」を強く意識した言葉です。

「食」以外のことは含まれていませんし、「痩せる」という意味も持っていません。

単純に「食事」「食事のしかた」「食事法」を指す言葉です。

したがって、英語では本来、

「痩せるかどうかは関係なく、体に良いとされる食事法」

のことを、「ダイエット」と言うわけです。

(体に良い食事法を実行すれば、多くの場合、体重が落ちて肥満が解消されるので、結果的に「痩せる」ことになります)

つまり、おなじ「ダイエット」という言葉でも、日本とアメリカとではニュアンスが異なります。

 

今回、アメリカで人気の「健康によい食事法」を紹介するにあたり、「健康によい食事法」を「ダイエット」と表現してしまうと誤解が生じますので、あえて「食育ダイエット」と表現することとします。

 

<目次>

  1. 最も信頼度の高い食育ダイエット
  2. 次に信頼度の高い食育ダイエット
  3. 人気の高い食育ダイエット
  4. 特殊な食育ダイエット
  5. まとめ

 

1.最も信頼度の高い食育ダイエット

アメリカで人気の食育ダイエットのうち、健康に良いことが科学的にも確認され、政府や学界から支持されているものを3つ紹介します。

いずれも、権威ある医学機関によって開発されたものです。

  1. DASHダイエット(開発者:国立心臓・肺・血液センター)
  2. MINDダイエット(開発者:ラッシュ大学)
  3. TLCダイエット(開発者:アメリカ心臓学会)

 

医学機関が開発したものと聞くと、「病院食」なのではないかと思うかもしれませんが、いずれも一般の健常者向けを想定しています。

つまり、日常の食事です。

 

1-1.DASHダイエット

アメリカの「国立心臓・肺・血液センター(National Heart, Lung, and Blood Institute)が開発した、高血圧をストップさせる食事法です。

DASH = Dietary Approaches to Stop Hypertension

(高血圧をストップさせる食事法)

 

つまり、もともとは高血圧患者のための食事法として考案されました。

しかし内容がきわめてヘルシーであるため、専門家の評価も高く、一般向けの食育としても推奨されています。

アメリカ人にとって最良の食事法だとして、アメリカ農務省の「お墨付き」もついています。

 

1-2.MINDダイエット

認知症予防の食事法です。

シカゴにあるラッシュ大学が、DASHダイエット(前述)と地中海ダイエット(後述)を組み合せて開発しました。

「積極的に食べたい10の食材」(←いわゆる「ブレインフード」

「なるべく避けたい5つの食材」

を守ろうという内容になっています。

実験によると、このMINDダイエットを厳格に守った人のアルツハイマー病のリスクは50%以上、低下しました。

この食事法をゆるく行った人でも35%低下したとのこと。

脳年齢(認知機能)も7年分以上若くなったそうです。

 

1-3.TLCダイエット

TLC = Therapeutic Lifestyle Changes

(生活習慣を変えるセラピー)

アメリカ国立衛生研究所が開発し、アメリカ心臓学会が監修した、循環器系の疾病を予防するための食事法です。

飽和脂肪酸の摂取を押さえ、悪玉コレステロールを減らすことを目的としています。


2.次に信頼度の高い食育ダイエット

以下の4つの食育ダイエットも、十分に信頼性が高いとして専門家に支持されています。

  1. FERTILITYダイエット
  2. メイヨ・クリニック・ダイエット
  3. 地中海ダイエット
  4. アジアン・ダイエット

 

2-1.FERTILITYダイエット

「FERTILITY」とは、もともとは「豊かさ」を意味する言葉ですが、転じて「子だくさん」を意味する言葉にもなっています。

したがって、FERTILITYダイエットは、

「不妊対策の食事法」

という意味になります。

ハーバード大学の2人の医学博士が開発した、健全な排卵をうながし妊娠確率を高める食事のメソッド。

30歳から55歳の女性看護師24万人の食生活を、40年近くのあいだ調査した結果から、考案されたものです。

 

2-2.メイヨ・クリニック・ダイエット

有名なメイヨ・クリニックが提唱する健康長寿のための食事法。

メイヨ・クリニック独自のフードピラミッドに基づいた食事法です。

 

2-3.地中海ダイエット

地中海沿岸諸国の伝統食にもとづく、食事の方法です。

イタリア料理やギリシア料理に接すると分かりますが、地中海諸国の食事は野菜、魚、オリーブオイルが中心になります。

この食べかたを、日常生活に取り入れようというのが地中海ダイエットです。

なお、この地中海ダイエットは、和食と同様、ユネスコの世界文化遺産に登録されています(和食より先に登録されています)。

 

2-4.アジアン・ダイエット

欧米の人々からみると、アジアの人々は「食を楽しんでいながら、肥満が少ない」ということで、うらやましいようです。

なかでも日本食に対する関心は高く、日本食の研究が進められています。


3.人気の高い食育ダイエット

ここまでに紹介した7つの食育ダイエットは、主に政府や学界が開発したいるものですが、これから紹介するものは、民間で開発されたもののうち、人気の高いものです。

  1. ウェイトウォッチャーズ
  2. 菜食ダイエット
  3. オーニッシュ・ダイエット
  4. サウスビーチ・ダイエット
  5. アトキンズ・ダイエット
  6. GIダイエット
  7. ゾーン・ダイエット

 

3-1.ウェイトウォッチャーズ

世界最大のダイエット会社ウェイトウォッチャーズが会員向けに提供している食事法です。

市販されている食品に点数をつけ、1週間の合計点数が一定の枠内に収まるように食べていきます。

 

3-2.菜食ダイエット

菜食の「厳しさ」により、パターンが2つあります。

  1. フレクシタリアン・ダイエット
  2. ベジタリアン・ダイエット
  3. ビーガン・ダイエット

 

<3-2-1.フレクシタリアン・ダイエット>

日本語でいうと「ゆるベジ」に該当する言葉が、「フレクシタリアン」です。

野菜多めの食事ですが、野菜オンリーというわけではなく、必要に応じて肉も食べます。

 

<3-2-2.ベジタリアン・ダイエット>

菜食が中心で、肉は食べませんが、人によっては

「魚OK」「チーズOK」「タマゴOK」という場合があります。

それぞれ「ペスコ・ベジタリアン」「ラクト・ベジタリアン」「オボ・ベジタリアン」と呼ばれます。

なにがOKなのかは、健康上の理由というより、主義主張の違いで異なるようです。

 

<3-2-3.ビーガン・ダイエット>

肉を食べないのは当然としても、魚もチーズもタマゴもダメ、動物性のものは一切受け付けない、という厳密な菜食が「ビーガン」です。

 

3-3.オーニッシュ・ダイエット

ディーン・オーニッシュ博士が考案した、低脂肪を特色とする食事法。

食物を健康に良いものの順位で1から5グループに分類し、グループ1やグループ2(=健康に良い)を中心に食べる、という方法です。

グループ1には野菜やフルーツ、良質の炭水化物や脂質、タンパク質が含まれています。

 

3-4.サウスビーチ・ダイエット

「サウスビーチ」というネーミングで多くのセレブリティをひきつけた、有名な食事法です。

クリントン元大統領夫妻もこの食事法に傾倒したという噂があります。

ビジネススクールなどでは、ネーミングで成功した事例としてときどき紹介されます。

提唱者はマイアミ在住の心臓内科医アーサー・アガットン博士。

内容としては良質の炭水化物食品、良質の脂肪食品を選び、そうでない炭水化物や脂肪は避けるというのが基本のセオリーです。

 

3-5.アトキンズ・ダイエット

その名の通りアトキンズ博士が提唱したもので、糖質制限食のさきがけとなった食事法。

1980-90年代にアメリカで一世を風靡しました。

炭水化物だけ避ければよく、脂肪については気にしなくてよい。

これが「肉好き」アメリカ人に歓迎され、大ヒット。

アトキンズ・ブームはすさまじく、

  • 多くの飲食店が「アトキンズ・メニューあります」の看板を立てて客の呼び込みをはかった
  • ほとんどの健康食品店に「アトキンズ・コーナー」があった
  • 炭水化物の売上が激減し、パスタメーカーが倒産した

当時はそんな状況でした。

 

その人気絶頂のさなかに、当のアトキンズ博士が他界しました。

その際、

「アトキンズ博士は体重が100キロもあり、階段から落ちて亡くなった」

という噂がまことしやかに流れ、アトキンズ・ブームはあっという間に終息してしまいました。

ところが、その後なぜかヨーロッパでアトキンズ・ブームが巻き起こり、今でもヨーロッパ中心にアトキンズ関連商品が売れているようです。

 

短期的に体重を落とすには強力な食事法ですが、効果が長続きしないという欠点があると言われています。

 

3-6.GIダイエット

GI(グリセミック指数)をもとにした食事法。

グリセミック指数とは、食後に血糖値が上がるスピードを食品ごとに数値化したもので、数値が高いものほど体に良くない(数値が低いほうがよい)とされています。

 

3-7.ゾーン・ダイエット

別名「4・3・3ダイエット」。

生化学者のバリー・シアーズ医師が唱えたもので、1日のカロリー摂取量を

  • タンパク質:3割
  • 脂肪:3割
  • 炭水化物:4割

に調節するという方法です。

「糖質制限型食」の1種とされていますが、糖質自体を諸悪の根源とする他の類似メソッドに比べれば、ゾーン・ダイエットの主張はおだやかで、食事のバランスを少しだけ変えようという内容です。


4.特殊な食育ダイエット

以下は、専門家のあいだではその効果や安全性について賛否両論ですが、一定の支持者を得ている食育ダイエットです。

  1. ボルメトリクス・ダイエット
  2. 酸アルカリ・ダイエット
  3. ローフード・ダイエット
  4. ダンカン・ダイエット
  5. パレオ・ダイエット

 

4-1.ボルメトリクス・ダイエット

食品には、コンニャクのように「栄養成分は少ないが、量のわりにカロリーの低いもの」があります。

一方、「栄養成分はいろいろあるけど、量のわりにカロリーが高いもの」もあります。

アボカドなどはどの一例でしょう。

このことをふまえ、

  • あまり運動をしなかった日(カロリー消費が少なかった日)
  • よく運動した日(カロリー消費が多かった日)

によって、食べものを変える、という方法がボルメトリクス・ダイエットです。

 

4-2.酸アルカリ・ダイエット

酸性の食べもの、アルカリ性の食べものを 8:2 のバランスで食べることで、健康を得ることを目指します。

1日を通じてバランスさせればよいのではなく、食事のたびに厳密に8:2 を意識する必要があるため、少々面倒なことが欠点とされています。

また、これで体重が健康的に落ちるというエビデンス(研究結果)がまだ十分には揃っていません。

 

4-3.ローフード・ダイエット

野菜・果物を中心に、加熱しないで食べる、というダイエットです。

その起源は1830年にさかのぼり、当時アメリカで流行したコレラの感染予防に、ローフードがよいと言われたのが始まりのようです(これ自体は誤りでしたが)。

その後、19世紀末にスイスでローフード専門のクリニックができ、現在のローフードの考えに近いものができました。

ローフード・ダイエットは加熱によって失われがちな酵素やビタミン、ミネラルなどを効率よく摂取することを目的とします(酵素が失われない程度の低温加熱は可とされています)。

医学専門家の研究では、ローフード食は健康的だという研究結果もある一方、身体にさまざまな問題を起こすという研究結果もあり、賛否両論です。

 

4-4.ダンカン・ダイエット

米国で流行していますが、フランス人のダンカン医師が提唱した食事法。

食べてよい食品を100種類挙げ(その多くはタンパク質がメイン)、さらに食べてもよい量を厳しく制限。

その後、100種類に加えて28種類の野菜を食べながら、体重をどんどん落としていくものです。

厳しすぎて危ない、という理由で、専門家の評価はあまり高くありません。

しかしとても早く体重が落ちるため多くのファンを獲得しています。

 

4-5.パレオ・ダイエット

農耕を始めるまえの原始人の食生活に戻ろう、というダイエット。

狩猟で得られる肉や魚、採集で得られる野菜・果物・ナッツを食べ、ご飯やパン、麺類などは食べない、というものです。

アメリカではかなり流行していますが(※※)、専門家の評価はあまり高くないようです。

専門家の評価が低い理由は、

「原始人の食生活じたいはOKだが、当時の人類が食べていたものとまったく同じものは手に入らない」

「したがって、パレオ・ダイエットをしているつもりでも、実際にはそうなっていない」

つまり、真剣にやろうとしても無理だ、というのが理由のようです。

 


5.まとめ

アメリカで「健康に良い食事法」とされているものを19種類、「食育ダイエット」と名付け、

  • 健康に良いことが科学的にも確認され、政府や学界から支持されているもの
  • 上記ほどではないが、十分に信頼性が高いとして専門家に支持されているもの
  • 人気の高いもの
  • 専門家のあいだではその効果や安全性について賛否両論ながら、一定の支持者を得ているもの

という4つのカテゴリに分け、紹介しました。

 

これらの食事法の目的はあくまで「健康になる」ことです。

しかし健康な食事法を実践すれば、多くの場合、結果的に体重が落ちることになるので、「痩せるダイエット」にもつながるとされています。

 

 

(※)日本で「サプリメント」といえば、それだけで栄養を補給する錠剤やカプセルを意味することになります。しかし英語で supplement というと、単に「補給」という意味しかありません。したがって、日本人がイメージする錠剤やカプセルのことを表現する場合は、diet という言葉をつけ加え、dietary supplement と言わなければなりません。わざわざ「食事」を意味する dietary という単語をつけないと、いわゆるサプリメントの意味にはならないのです。

(※※)「パレオダイエット専門の食事カウンセリングサービス」が存在するくらい、流行しています。