
食育活動にはさまざまなスタイルがありますが、そのなかでも典型といえるものの1つが「食育講師」という活動です。
今回は、食育講師について解説します。
<目次>
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1.食育講師とは
食育に関する講座は、各地で開かれています。
- 学校現場で開かれるもの(※)
- 自治体が主催するもの
- ボランティア団体などが主催するもの
- 企業が主催するもの
- 個人で食育活動をしている人が主催するもの
など、形式はさまざまです。
そうした講座で、講師としての役割を担うのが食育講師です。
1-1.狭義の食育講師
食育は
- 栄養の話
- 農業や漁業などの話
- 料理の話
- 食文化の話
など、さまざまな概念がミックスしたものです。
これらをある意味「まんべんなく」組み合わせてカリキュラム化されたものが「狭義の食育」であり、学校現場での食育講座や、自治体が主催する食育講座などは、「狭義の食育」に該当します。
この「狭義の食育」を教える講師が「狭義の食育講師」です。
1-2.広義の食育講師
いっぽう、
- 野菜について学ぶ講座
- 栄養学の講座
- スポーツ選手の食事について学ぶ講座
- 発酵食品について学ぶ講座
- オーガニックについて学ぶ講座
- 食の安全について学ぶ講座
- ブレインフードについて学ぶ講座
などは、テーマを絞って行われる、専門性の高いものです。
こうした講座を「食育」とみなすかどうかは意見が分かれるところですが、食育総研ではこれらを「広義の食育」として扱っています。
この「広義の食育」で、それぞれ専門的な話をする講師が「広義の食育講師」です。
2.食育講師に必要な知識
食育講師に必要な知識は、2種類あります。
- 1つは、「狭義の食育」に必要とされる、食育全般についての広い知識(浅くてもよい)。
- もう1つは、「広義の食育」に必要とされる、専門性の高い知識(狭くてもよい)。
前者(食育全般についての広い知識)だけでも食育講師はできます。
その場合、「狭義の食育講座」を「主戦場」にすることになります。
後者(専門性の高い知識)だけでも食育講師はできます。
その場合、「自身の専門性が必要とされる分野の食育講座」が「主戦場」になります。
どちらかに特化することももちろん悪くありませんが、
- 食育全般についての広い知識を持ったうえで、専門分野を選んで深く掘り下げる
- 専門性の高い知識を持った状態で、食育全般についての広い知識をあらためて習得する
ということができれば、食育講師としての価値も上がるでしょう。
2-1.食育全般についての広い知識
食のことをほとんど何も知らない人に対し、以下のことをひととおり説明できれば、「狭義の食育」の講師ができます。
- 5大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル)について
- 現代日本人の食生活のどこが良く、どこが悪いのか
- 現代の日本の農業が抱えている問題
- 日本の食料自給率について
- 日本食のマナー
- 日本のおもな食文化について
2-2.専門性の高い知識
3.知識の学び方

食育講師としての知識を獲得するには、
- 本で勉強する
- 講座やセミナーで勉強する
- 体験する
- その分野で仕事をする
などの方法があります。
3-1.本で勉強する
「専門性の高い知識」を学ぶのに適した方法の1つです。
いっぽう、「食育全般についての広い知識」を学ぶのにはあまり適していません。
というのは、市販されている書籍のなかで「食育全般についての広い知識」を解説している本は非常に少ないからです。
それよりもむしろ、
- 食育白書
- 食育に関する協会が食育講師育成用に作成しているテキスト
を読むほうが、「食育全般についての広い知識」を得やすいと思われます。
3-2.講座やセミナーで勉強する
食に関する講座やセミナーは各地でさまざまな主催者によって開かれています。
そのなかから適切なものを選んで受講するとよいでしょう。
ただし、自治体が開催する一般向けの食育講座のように、食のことをほとんど何も知らない人を対象とした講座は、講師になろうという人が受講するには初歩的すぎます。
反対に、
- 農業系の大学、栄養系の大学などが開催する市民講座
- 食の協会などが開催する専門性の高い講座
などは、お勧めです。
学術畑の人や、食業界の人と知り合う機会にもなります。
3-3.その分野で仕事をする
気軽な方法ではありませんが、「専門性の高い知識」を学ぶのに適した方法の1つです。
- 食品会社に勤める
- 料理教室のアシスタントをする
- 農業に関わる
- 食の協会などのスタッフになる
などのパターンがあります。
4.食育講師の活動
食育講師としての活動には
- みずから講座を主催する食育講師
- 別の主催者が行う食育講座に招聘されて教壇に立つ食育講師
という2種類があります。
4-1.みずから主催する
オリジナルのテキストを準備し、必要に応じて会場を予約し、みずから受講者を募集します。
受講者集めを自分でしなくてはなりませんが、その代わり、自由度の高いやり方です。
4-2.講師に招聘される
- 自治体が主催する食育講座に講師として呼ばれる(おもに狭義の食育:幅広い知識が求められる)
- 食の協会が主催する食の講座に講師として登壇する(おもに広義の食育:専門的な知識が求められる)
といった形式です。
自由度は比較的低いですが、受講者集めからは解放されるやり方です。
5.まとめ
食育には「狭義の食育」と「広義の食育」があり、それに応じて「狭義の食育講師」と「広義の食育講師」が存在します。
「狭義の食育講師」が持つべき知識は、栄養・農業(や漁業など)・料理・食文化に関する広い知識です。
「広義の食育講師」に必要な知識は、専門分野に関する深い知識です。
それらの知識は、「本を読む」「講座やセミナーを受講する」「食の仕事に携わる」などの方法で身につけます。
食育講師としての活動には、みずから講座を開く、別の主催者が開く講座に講師として登壇する、という2種類があります。
(※)学校現場で行われる食育講座(食育の授業)には、「外部の食育講師を招聘して行われるもの」のほか、「教員が食の勉強をして食育の授業を行うもの」「栄養教諭が担当するもの」があります。
- 検定試験を受けるのにメールアドレスの登録などは必要ありません。
- 合格者全員に進呈:「食育活動スタートアップガイド(PDF)」